学生達は皆、そんなことで入社できるのなら、とほくそ笑みながら会社を後にします。ある学生は不審がる母親をようやく縁側まで連れて行き、タライに水を汲み入れ、鼻歌まじりに準備を始めました。ところが、母親の片足を持ち上げた瞬間、その足の裏があまりにも荒れ放題に荒れているのを手のひらに感じ、思わず絶句してしまいました。
その母親は若い時に夫を事故で亡くし、女手一つで死に物狂いで働いて子供達を育ててきたのでした。そのことを悟った学生は、急に胸がいっぱいになり、「母さん、長生きしてくれよな」と、一言いうのが精一杯でした。それまで、息子の柄にもない孝行を冷やかしていた母親は「ありがとう」と言ったまま黙り込んでしまいました。
ふと、彼の手に落ちてくるものがありました。母親の涙でした。学生は母親の顔を正視できなくなり、「お母さんありがとう」といってそのまま自分の部屋に引きこもってしまいました。
この会社の社長はいつも「人は決して一人で生きてゆけるものではない、たくさんの人に支えられて生きているのだ」と諭されるのだそうです。 |